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事業譲渡の顧客名簿と個人情報保護法:同意の要否と利用目的
事業を譲渡して顧客名簿などの個人データを渡すとき、個人情報保護法第27条第5項第2号により、承継に伴う提供は本人の同意が要る第三者提供に当たりません。引き継いだ側は第18条第2項により、承継前の利用目的の範囲に縛られます。条文と個人情報保護委員会のQ&Aで確認できた範囲を示します。
ここでは法令と個人情報保護委員会の資料の整理にとどめ、個別の判断はしません。名簿を渡す前に、個人情報保護委員会のQ&Aと、事業の状況を踏まえた弁護士・行政書士等の意見を確認してください。
顧客名簿の引き継ぎで確認できたもの(4件)
- 個人事業でも対象になるか:顧客名簿などを事業に使っていれば、個人事業主も個人情報取扱事業者個人情報取扱事業者は、条文上「個人情報データベース等を事業の用に供している者」です。除かれるのは国の機関、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人で、事業の規模や法人かどうかによる除外は条文にありません。検索できる形に整理した顧客名簿(表計算ソフトの名簿など)を事業で使っていれば、個人事業主も対象と読めます。根拠:個人情報保護法第16条第2項
- 名簿を渡すのに本人の同意は要るか:承継に伴う提供は第三者提供に当たらず、あらかじめの同意は要らないと読める個人データを第三者に提供するときは、法令に基づく場合などを除き、あらかじめ本人の同意が必要です。ただし、「合併その他の事由による事業の承継に伴って個人データが提供される場合」の提供を受ける者は、第三者に該当しないとされています。事業譲渡で顧客名簿を渡すのが、この「事業の承継に伴う提供」に当たるかどうかが論点です。名簿だけを事業と切り離して売る場合が同じ扱いになるかは、今回確認できていません。個別の事情で変わるため、個人情報保護委員会のQ&Aで確認してください。根拠:個人情報保護法第27条第1項・第5項第2号
- 引き継いだ後に名簿を使える範囲:承継前の利用目的の範囲内。関連性が合理的に認められる範囲で目的を変えた場合はその範囲内事業を承継して個人情報を取得した人は、あらかじめ本人の同意を得ないで、承継前の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱えません。委員会のQ&A(Q2-10)は、自社サービスに使えるのは、元の事業者が特定していた利用目的の範囲内か、その目的と関連性を有すると合理的に認められる範囲で変更した後の利用目的の範囲内に含まれる場合と答えています。範囲を超える使い方をするときは、あらかじめ本人の同意が必要です。根拠:個人情報保護法第18条第2項、個人情報保護委員会Q&A Q2-10
- 譲渡の交渉段階で名簿を見せるとき:不動産売買の例では、安全管理の契約を結べば同意なしで提供でき、不調なら返還・消去・廃棄委員会のQ&Aは、不動産の売買契約を結ぶ前の交渉段階で、購入希望者に賃借人の個人データを提供する場合を取り上げています。実質的に委託や事業の承継に類似するとして、あらかじめ本人の同意なしで提供できるとしています。条件は、利用目的と取扱方法、漏えい等が起きたときの措置、交渉が不調になったときの措置などを定め、安全管理措置を守らせる契約を結ぶことです。交渉が不調に終わったら、受け取った側は個人データを返還、消去、廃棄します。これは不動産の例で、事業譲渡一般にそのまま当てはまるかは、このページでは確認できていません。根拠:個人情報保護委員会Q&A Q2-11・Q2-12
よくある質問
- 店の事業譲渡で、顧客の連絡先一覧を買い手に渡すとき、お客さん全員に同意を取る必要がある?事業の承継に伴って個人データが提供される場合、提供を受ける側は第三者に該当しないと法第27条第5項第2号に定められています。そのため、この場合はあらかじめの同意を条文上の要件にしていません。ただし、承継に当たるかの当てはめと、渡した後の使い方の制限は別に確認が必要です。個別の判断は個人情報保護委員会や弁護士に相談してください。出典:個人情報保護法第27条第5項第2号(e-Gov法令検索、2026-10-15取得)
- 買い手が名簿を引き継いだら、自分の新サービスのお知らせを送ってよい?承継前の利用目的の範囲内か、その目的と関連性を合理的に認められる範囲で変更した利用目的の範囲内なら可能と、委員会のQ&Aは答えています。範囲を超える場合は、あらかじめ本人の同意が必要です。出典:個人情報保護法第18条第2項、個人情報保護委員会Q&A Q2-10
- 事業譲渡の話がまとまらなかったら、見せた名簿はどうなる?委員会のQ&Aは、不動産売買の交渉が不調になった場合に、購入しようとした側が提供を受けた個人データを返還、消去、廃棄する必要があるとしています。事業譲渡の交渉でも、この考え方に沿って契約に定めておく形が考えられますが、事業譲渡そのものの例は今回確認できていません。出典:個人情報保護委員会Q&A Q2-11・Q2-12
確認できていないもの
個人事業主が亡くなって相続人が事業を継ぐときの顧客名簿の扱い、名簿だけを売るときの扱い、取引先の担当者名などの法人側の情報の扱いは、今回の条文とQ&Aの範囲では確認できていません。個人情報保護委員会が公表するガイドライン(通則編)の「事業の承継」の項(3-1-4)と、Q&A全文で、自分の事業に近い事例を確認してください。許認可の扱いは許認可の承継の扱い一覧で確認できます。
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