水利権(水利使用許可)の相続・譲渡での承継
農業・養魚・小水力発電・旅館の取水などで河川の水を使う許可は、河川法で承継の扱いが分かれます。2026年11月6日にe-Gov法令検索で確認したところ、相続・合併・分割は地位を承継して30日以内に届出、権利の譲渡は河川管理者の承認が要ります。
引き継ぎ方で変わる手続き(相続は届出、譲渡は承認)
相続・合併・分割で一般承継するときは、承継の日から30日以内の届出です(河川法第33条)。事業譲渡のように権利だけを移すときは、河川管理者の承認を先に受けます(第34条)。なお、河川の土地や工作物の占用許可、道路占用許可の承継は別の許可なので、道路占用許可・河川占用許可の承継のページで確認してください。
河川法の水利権の承継を条文で確認(6件)
- 水利権とは何の許可か:河川の流水を占用するには河川管理者の許可が要る。「水利権」は法律上の用語ではない河川の流水を占用しようとする者は、河川管理者の許可を受けなければなりません(第23条)。国土交通省は、水利権を、特定の目的(水力発電、かんがい、水道など)のために必要な限度で流水を排他的・継続的に使用する権利としたうえで、「水利権」という言葉は法律上のものではなく、河川法の中には出てこないと説明しています。このページでは、許可に基づく権利を水利権と呼びます。根拠:河川法第23条、国土交通省「水利権について」
- 相続・合併・分割で引き継ぐとき:相続人や分割・合併で設立される法人は、許可に基づく地位を承継する。承継の日から30日以内に河川管理者へ届出相続人、合併または分割により設立される法人などの一般承継人は、被承継人が持っていた許可に基づく地位を承継します(第33条第1項)。承継した人は、承継の日から30日以内に、河川管理者へ承継したことを届け出ます(同条第3項)。分割の場合は、権利を承継する法人が対象です。承認ではなく届出で、許可を取り直す規定は第33条には見当たりません。根拠:河川法第33条第1項・第3項
- 事業譲渡で権利だけ移すとき:河川管理者の承認が要る。承認を受けて譲り受けた人は、譲渡人の地位を承継する許可に基づく権利は、河川管理者の承認を受けなければ譲渡できません(第34条第1項)。承認を受けて譲り受けた人は、譲渡人の許可に基づく地位を承継します(同条第2項)。事業譲渡で取水を続ける場合は、譲渡の前に承認を得る必要があるという整理です。承認を受けないで譲り渡すことはできません。根拠:河川法第34条第1項・第2項
- 承認の申請を処理するときの協議:国土交通大臣が承認申請を処分する場合は、関係行政機関の長に協議する(政令で定めるものを除く)国土交通大臣は、水利使用の許可に係る承認の申請があった場合、政令で定める流水の占用を除き、処分の前に関係行政機関の長に協議しなければなりません(第35条第1項)。協議が要らない流水の占用は、河川法施行令第19条で「特定水利使用以外のもの」とされています。特定水利使用は同令第2条第1項第3号で、最大出力1,000キロワット以上の発電、最大取水量が1日2,500立方メートル以上または給水人口1万人以上の水道、1日2,500立方メートル以上の鉱工業用水道、最大取水量が毎秒1立方メートル以上またはかんがい面積300ヘクタール以上のかんがいなどです。小規模な農業用水・養魚・旅館の取水は、通常これに当たりません。根拠:河川法第35条第1項
- 許可の条件と許可期間:許可・承認には必要な条件が付く。許可期間は発電が概ね20年、その他は概ね10年が実務上の原則河川管理者は、許可や承認に必要な条件を付けることができます(第90条)。国土交通省の説明では、許可期間は発電水利使用が概ね20年、その他の水利使用が概ね10年として実務上処理されています。引き継ぐ時点で許可の残り期間と条件(取水量、取水の時期など)が、事業計画に合うかを確認してください。根拠:河川法第90条、国土交通省「水利権について」
- 慣行水利権のとき:慣行水利権は、許可を受けたものとみなされる。河川法第87条もみなし許可を定める国土交通省は、旧河川法の施行以前などから特定の人が排他的・継続的に水を支配してきて、社会的に承認された権利を慣行水利権とし、改めて許可の申請をしなくても許可を受けたものとみなされると説明しています。河川法第87条も、河川の指定の際にすでに権原に基づいて行為をしている人は、従前と同様の条件で許可を受けたものとみなすと定めています。第33条・第34条は「許可を受けた者」の地位や権利を対象にするため、みなされた許可も条文の文言上は同じ扱いになります。ただし、実際の手続きの運用や必要書類は、河川管理者の案内に従ってください。根拠:国土交通省「水利権について」(seido)
よくある質問
- 農家の父が持っていた取水の許可(水利権)は、相続で子に移る?河川法第33条第1項は、相続人が被相続人の許可に基づく地位を承継するとしています。承継した人は、承継の日から30日以内に河川管理者へ届け出ます(第33条第3項)。許可を取り直す規定は第33条には見当たりません。農業用水が慣行水利権のときの扱いは、河川管理者に確認してください。出典:河川法第33条第1項・第3項(e-Gov法令検索、2026-11-06取得)
- 養魚場や旅館を事業譲渡すると、取水の許可も買い手に移る?許可に基づく権利は、河川管理者の承認を受けなければ譲渡できません(河川法第34条第1項)。承認を受けて譲り受けた人は、譲渡人の地位を承継します(同条第2項)。譲渡の契約だけでは足りず、承認を受けてから引き継ぐ整理です。出典:河川法第34条第1項・第2項(e-Gov法令検索、2026-11-06取得)
- 届出や承認の窓口はどこ?条文上は「河川管理者」で、河川によって国土交通大臣または都道府県知事などになります。具体的な窓口は水利使用の許可書に書かれた河川管理者や、取水場所の河川事務所・都道府県の河川担当課に確認してください。一級河川は国土交通大臣が管理し(第9条第1項)、指定区間内は一部の事務を都道府県知事が行います(同条第2項)。ただし特定水利使用(大規模な発電・水道・工業用水・かんがい)の第34条の承認と第33条第3項の届出は、国土交通大臣側に残ります(施行令第2条第1項第3号・第4号)。二級河川は都道府県知事が管理します(第10条第1項)。出典:河川法第33条第3項・第34条第1項
- 水利権の相続届出を忘れるとどうなる?第33条第3項は、承継した人に30日以内の届出を義務づけています。届出をせず、または虚偽の届出をした人は、5万円以下の過料に処するとされています(第108条)。承継の日から数えて30日以内に、河川管理者へ届け出てください。出典:河川法第33条第3項・第108条(e-Gov法令検索、2026-11-06取得)
申請書類と関連ページ
承認申請の様式と添付書類は河川管理者ごとに案内が異なるため、窓口で確かめてください。個人の資格が移らない点は個人の資格と事業の許可の違いを、事業全体の手取り比較は廃業・承継・譲渡の手取り比較シミュレーターを確認してください。
事業をやめる・譲るときの手取りを比べる
水利権の扱いとは別に、事業を廃業するか譲渡するかは金額で比べられます。廃業・承継・譲渡の手取り比較では、事業の評価額、勤続・事業継続年数、事業取得費(譲渡のとき。不明なら0円)、小規模企業共済の加入の有無(加入しているときは掛金月額と納付月数)を入れます。 共済「あり」で入力すると、廃業の手取りは評価額ではなく共済金の一括受取で計算されます。共済の受取額の目安は小規模企業共済の受給時期と手取りの計算例を参照してください。譲渡は廃業とは税の仕組みが異なり、比較結果はあくまで概算です。