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個人事業の預金口座・売掛金・取引先契約の引き継ぎ

個人事業を相続または事業譲渡で引き継ぐとき、事業用の預金口座、取引先への売掛金、取引先との契約は、許認可や従業員の手続きとは別に整理が要ります。民法の条文にもとづいて、形態ごとの扱いを一覧にしました。個別の判断はできません。

相続と事業譲渡の扱いの違い

対象相続(事業主が死亡)事業譲渡(譲り渡す)
預金口座遺産分割の前でも、相続開始時の預金額×3分の1×自分の法定相続分までは単独で払い戻せます。同じ金融機関からは150万円までです。口座の名義を買い手へ移す定めは民法にありません。事業用の入出金をどの口座で行うかは、買い手が自分の口座を開設するなど、取引先と金融機関との調整になります。
売掛金相続人が引き継ぐ財産に含まれます(民法第896条)。債権として譲渡できます。取引先への通知か取引先の承諾がなければ、取引先や第三者に主張できません。第三者に主張するには確定日付のある証書が要ります。
取引先との契約民法第896条で、相続人が被相続人の権利義務を承継します(一身に専属したものを除く)。契約書に解除や終了の条項があれば、その内容を確認します。相手方の承諾を得たときに、契約上の地位が買い手へ移ります。承諾が得られなければ、買い手との間で新しく契約します。

出典:民法第466条・第467条・第539条の2・第896条・第909条の2(e-Gov法令検索で2026-10-13に確認)、法務省「民法(相続法)改正」説明資料。

このページは民法上の一般的な整理です。口座の凍結の時期や払戻しの書類は金融機関ごとに異なり、債権譲渡の通知文面や取引基本契約の条項は個別に確認が必要です。税務上の扱い(売掛金の収入計上、事業用口座の区分など)は扱っていません。実際の手続きは金融機関・弁護士・税理士にご相談ください。

手続きを進める順番

  1. 預金:相続開始時の残高を金融機関ごとに確認する
    単独払戻しの額は口座ごとの相続開始時の残高で決まり、上限は金融機関ごとの150万円です。事業の運転資金と、生活費・葬儀費用のどちらに充てるかを分けて、必要額を見積もります。
    出典:民法第909条の2、法務省「民法(相続法)改正」説明資料
  2. 売掛金:譲渡の通知か承諾を、確定日付つきで残す
    事業譲渡で売掛金を移すときは、取引先への通知または承諾を確定日付のある証書にしておくと、第三者への主張に備えられます。譲渡を禁止・制限する特約があっても債権譲渡は有効ですが、特約を知っていた(または重大な過失で知らなかった)買い手には、取引先が支払いを拒めることがあります。
    出典:民法第466条第2項・第3項、第467条
  3. 取引先契約:契約書ごとに承諾の要否と解除条項を確認する
    事業譲渡では、取引先ごとに承諾を取ります。店舗や事務所の賃貸借・リース契約は、賃貸借・リースの承継のページで扱っています。
    出典:民法第539条の2

よくある質問

  1. 事業主が亡くなったとき、相続人は事業用の預金口座からすぐお金を引き出せますか。
    他の相続人の同意がなくても、相続開始時の預金額の3分の1に自分の法定相続分を掛けた額までは、単独で払戻しを求められます。ただし、同じ金融機関から受けられるのは150万円までです。これを超える資金が要るときは、家庭裁判所の仮分割の仮処分など別の手続きになります。
    出典:民法第909条の2、法務省「民法(相続法)改正」説明資料
  2. 売掛金を事業譲渡で買い手へ移すと、取引先に通知は必要ですか。
    売掛金は債権として譲渡できます。ただ、譲渡人が取引先(債務者)に通知するか、取引先が承諾しなければ、取引先や第三者に譲渡を主張できません。第三者に主張するには、その通知か承諾を確定日付のある証書で行う必要があります。
    出典:民法第466条第1項・第467条
  3. 取引先との契約は、事業譲渡で自動的に買い手へ移りますか。
    移りません。契約の当事者の一方が第三者に契約上の地位を譲る合意をし、契約の相手方がそれを承諾したときに、契約上の地位が移転します。取引基本契約や継続的な仕入契約は、買い手に替えるために相手方の承諾を取る必要があります。
    出典:民法第539条の2

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