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個人事業の承継、従業員をどう引き継ぐ?

個人事業の承継は、法人の株式承継と違い、雇用契約が自動的に後継者へ引き継がれるわけではありません。従業員数・雇用保険や社会保険の加入状況を入力すると、確認すべき手続きと目安の期限を一覧表示します。個別の労務・法的判断はできません。

従業員の雇用契約を切り替える予定日(雇用契約の開始日)の目安
クリーニング業・飲食店・ビル清掃業等の一部サービス業、農業・漁業等

確認すべき手続きチェックリスト

  1. 従業員との雇用契約を結び直す(本人の同意が前提)
    目安:承継実行日(2027年3月31日)まで
    個人事業の承継は、法人の株式承継のように事業主の地位ごと引き継がれるのではなく、多くの場合「事業譲渡」に当たります。事業譲渡で労働契約を引き継ぐには、譲渡側・譲受側の合意に加えて労働者本人の承諾が必要で、意思に反して雇用契約だけを移すことはできません。会社分割にだけ適用される自動承継の仕組み(労働契約承継法)は、個人事業の承継には使えません。
    出典:厚生労働省労働基準局「会社分割・事業譲渡・合併における労働者保護のための手続に関するQ&A」Q3(民法625条)
  2. 後継者が労働条件通知書を交付する
    目安:雇用契約を結び直す時(2027年3月31日まで)
    後継者は新しい使用者として、賃金・労働時間・就業場所などのうち書面交付が必須の6項目(契約期間、更新基準、就業場所・業務内容、始業終業時刻等、賃金の決定・計算・支払方法等、退職に関する事項)を書面(本人が希望すればFAX・メール等も可)で明示する義務があります。同じ仕事を続ける場合でも、事業主が変わる以上は新たな労働契約の締結として扱われます。
    出典:厚生労働省「採用時に労働条件を明示しなければならないと聞きました。」(労働基準法15条・同法施行規則5条)
  3. 雇用保険・社会保険の手続き前に、管轄ハローワークへ「同一性」を確認する
    目安:雇用保険の届出をする前に
    従業員が別の事業主に移る場合、原則は雇用保険の資格喪失・資格取得の手続きが必要です。ただし元の事業主と譲渡先の事業主に「同一性」が認められれば、資格の得喪ではなく転勤の手続きで済む場合があります(新旧事業実態証明書等の提出)。同一性の有無は個別にハローワークが確認するため、この判定はできません。該当しそうな場合は事前に相談してください。
    出典:東京労働局職業安定部「適用事業所に関するQ&A」Q8
  4. 前の事業主が雇用保険適用事業所廃止届を提出する
    期限目安:2027年4月10日頃まで(廃止の日の翌日から10日以内)
    提出先は廃止する事業所を管轄するハローワーク。全被保険者の雇用保険被保険者資格喪失届・離職証明書等の添付が必要です。上記の「同一性」が認められ転勤扱いになる場合は、資格喪失の手続きが不要になることがあります。
    出典:ハローワーク(厚生労働省)雇用保険適用事業所の手続き案内
  5. 後継者が雇用保険適用事業所設置届・資格取得届を提出する
    期限目安:2027年4月10日頃まで(該当した日の翌日から10日以内)
    後継者の事業所を管轄するハローワークへ提出します。実際に従業員を雇用する前には提出できず、雇用した日以降の手続きになります。労働保険(労災保険)の保険関係成立届を先に労働基準監督署へ提出する必要もあります。
    出典:東京労働局職業安定部「適用事業所に関するQ&A」Q1・Q5

事業の出口別 労働保険・社会保険の終了手続き

手続き期限と提出先廃業事業譲渡(譲る側)相続
労働保険 確定保険料申告書(年度当初の概算保険料の精算)事業を廃止した日の翌日から50日以内。労働基準監督署・労働局・金融機関事業を廃止して保険関係が消滅するため提出します。概算より確定が少なければ労働保険料還付請求書も出します。譲る側が事業を廃止する場合は同じ扱いです。譲受側は保険関係成立届を出します(上のチェックリスト参照)。事業主が亡くなった場合の扱いは公式ページで確認できませんでした。労働基準監督署へご確認ください。
雇用保険適用事業所廃止届(あわせて被保険者資格喪失届・離職証明書)廃止した日の翌日から10日以内。事業所を管轄するハローワーク提出します。譲る側が事業を廃止する場合は提出します。同一性が認められれば転勤扱いになることがあります。事業主が亡くなった場合の扱いは公式ページで確認できませんでした。ハローワークへご確認ください。
健康保険・厚生年金保険 適用事業所全喪届事実発生から5日以内。事務センターまたは管轄の年金事務所事業を廃止(解散)する場合に提出します。譲る側が事業を廃止する場合に提出します。事業主が亡くなった場合の扱いは公式ページで確認できませんでした。年金事務所へご確認ください。

出典:兵庫労働局「事業(労働者の雇用)を終了したとき」、徳島労働局「事業を廃止・休止したとき、または雇用する労働者がいなくなったとき」、日本年金機構「適用事業所が廃止等により適用事業所に該当しなくなったときの手続き」(2026-10-13に確認)。事業は続けるが被保険者が0人になる場合も雇用保険の事業所廃止届が必要です(徳島労働局)。

従業員の手続きとは別に、事業主本人の国民健康保険・国民年金の切り替えは廃業・事業主の死亡のあとの国民健康保険・国民年金の届出、事業主本人や一人親方の労災保険の特別加入は労災保険の特別加入と廃業で確認できた範囲を整理しています。

このチェックリストは「事業譲渡」型の個人事業承継(生前贈与・売買など、承継実行日が明確なケース)を前提にした一般的な手続きの整理です。相続(先代の死亡)による承継の場合は雇用契約の扱いが異なる可能性があり、今回一次資料で確認できていないため対象外としています。年次有給休暇の勤続年数の通算についても、会社分割のような自動通算のルールは個人事業の承継には見当たらず、後継者と従業員の合意による任意の扱いになると考えられますが断定はできません。実際の手続きの前に、管轄のハローワーク・年金事務所・社会保険労務士へご確認ください。

よくある質問

  1. 事業を譲り受けると、従業員の雇用契約は自動で後継者に移りますか。
    移りません。事業譲渡では、譲る人と譲り受ける人の合意に加えて、労働者本人の承諾が必要です。労働者の意思に反して労働契約を譲渡することは認められていません。労働契約承継法は会社分割にだけ適用され、個人事業主の事業譲渡には使えません。
    出典:民法第625条、厚生労働省「会社分割・事業譲渡・合併における労働者保護のための手続に関するQ&A」Q3
  2. 後継者は従業員へ労働条件通知書を渡す必要がありますか。
    新しく労働契約を結ぶ以上、労働基準法第15条により労働条件の明示が必要です。書面で渡す項目は、契約期間、更新の基準、就業場所と業務、始業・終業の時刻と所定労働時間など、賃金の決め方と支払方法、退職に関する事項(解雇の事由を含む)です。
    出典:労働基準法第15条、同法施行規則第5条
  3. 雇用保険と社会保険の届出に、期限はありますか。
    健康保険・厚生年金保険の新規適用届と適用事業所全喪届は、事実があった日から5日以内です。雇用保険の適用事業所廃止届は、廃止の日の翌日から10日以内、事業開始に伴う設置の手続きは事業開始の日から10日以内が目安です。人数や業種で扱いが変わるので、年金事務所とハローワークで確認してください。
    出典:日本年金機構「新規適用の手続き」「適用事業所全喪届」、東京労働局「適用事業所に関するQ&A」
  4. 先代が亡くなって相続で承継するときも、このチェックリストで足りますか。
    このページは事業譲渡型(生前贈与・売買)を対象にしています。相続で先代が亡くなった場合の労働契約の扱いは、一次資料で確認できていないため対象外です。社会保険労務士へ確認してください。
    出典:このページの対象範囲

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